【心房細動と薬剤師】心房細動と心電図、使用薬剤の特徴を独自の見解でまとめました

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心房細動とは

心房に多数のマイクロリエントリまたは興奮発生部位が生じることで発生する不整脈です。

肺静脈が関与していることが多く、カテーテルアブレーション治療ではこの肺静脈を隔離する治療が多いです。

心房細動は非常によく遭遇する不整脈で、加齢とともに増加します。

高血圧、肥満、糖尿病、睡眠時無呼吸、尿酸、喫煙、アルコールとの関連も認められています。

心房細動と心不全

心房細動と心不全は高頻度に合併します

心房細動が心不全を引き起こすことも

心不全が心房細動を引き起こすこともあります。

また心房細動と左室拡張障害が合併すると循環動態の破綻リスクが高まります。

先ず心室の拡張で心房から心室に血液が流入、その後心房の収縮で残りを心室に押し出すのですが、

心房細動と左室拡張障害があわさるとどちらも十分に行えません。

心房細動と塞栓

心房細動では脳塞栓や肺塞栓、その他にも血栓が全身に飛んで腸管虚血や下肢虚血を引き起こし得ます。

そこでCHADS2もしくはCHA2DS2-VAScスコアを用いて血栓リスクを評価します。

心房細動だったらなんでもかんでも抗凝固というわけではないんですね。

CHADS2スコア0でも脳塞栓が起きるリスクはあるためより細かく評価したのがCHA2DS2-VAScスコアになります。

ちなみに抗血小板薬ではダメです。

非弁膜症性心房細動では主に左心耳で血栓が作られるのですが、血流は滞っており血栓形成にはフィブリンが関与していると考えられるためです。

心房細動と抗凝固薬

ではどの抗凝固薬を選択するか

弁膜症性であればワルファリンのみ。

それ以外は

腎機能と服用回数、中和薬の存在で選択することが多いです。

以前はワルファリン一択でしたがDOACの出現により様変わりしました。

ワルファリンはコントロールが難しい、納豆など食事制限が多い、 頭蓋内出血が多い。

これらのことから基本的にはDOACを選択し、禁忌であればワルファリン。

禁忌ほどでないけど腎機能が悪い患者には腎機能だけに依存せず実際に腎機能低下患者での安全性が認められているためアピキサバンもしくはエドキサバン。

服薬アドヒアランスを考慮するならエドキサバンかリバロキサバン。

中和薬があるのはワルファリンかダビガトラン。

それぞれの薬剤ごとにスタディがありますが私は簡単にこんな風に使い分けています。

リズムコントロールとレートコントロール

リズムコントロールとは心房細動を洞調律に戻すこと

レートコントロールとは頻脈を抑えることをいいます。

AFFIRM 試験ではリズムコントロールとレートコントロールを比較してどちらも有意差がなかった、むしろリズムコントロールの方が副作用が多かったという結果でした。

しかし、それはカテーテルアブレーションが広まる前のスタディでした。

それに心房細動が心不全予後に良くないことは認められているためやはりリズムコントロールが良いのではないかという考えは根強くありました。

そんな中、EAST-AFNET 4にてカテーテルアブレーションを含めたリズムコントロールの優位性が発表されました。

なんでもかんでもリズムコントロールするわけではなく、症状が強い人、若年者や心不全合併患者にはカテーテルアブレーションを含めたリズムコントロールを積極的に勧めることになりそうです。

心房細動の心電図

一つ一つみていきましょう。

P波がない。

これは心房筋が細かく震えるため心房が規則正しく収縮していないためです。

f波がある。

これは実は見えないこともあります。

長年心房細動を患っていた方はリモデリングも進み心房筋が疲れているんです。

逆に心房細動なりたての心房は元気で良くf波が見えます。

ちなみにf波は右心房に近いV1で一番みやすいです。

RR間隔が不規則。

これは、心房の興奮の一部しか心室に伝わらないためです。

本来は心房の興奮は房室結節を1:1で通過するのですが、

心房細動では心房が350~700/分程度興奮していますが、これが全部心室に伝わったら大事です。

心室は有効な心拍出量を担保できなくなり血行動態の破綻をきたします。

そこで房室結節が関所として一部だけしか伝わらないようにしているのです。

でも不規則なf波を規則正しく区切ることは困難なため心室へ伝わる興奮は不規則となる、RR間隔が不規則となるんです。

心房細動とレートコントロール

先程、リズムコントロールの方がとはいいましたがやはりリズムコントロールだけではコントロールできないこともあります。

日本のガイドラインでもまだレートコントロール推しです。

レートコントロールで使用する薬剤としては

1、β遮断薬(内服ならビソプロロールかカルベジロール)

2、非ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬

3、ジギタリス

4、アミオダロン

やはりβ遮断薬は欠かせません。

心筋梗塞や心不全の既往があれば尚更です。

喘息やCOPDがなければ是非積極的に使いたいですね。

ベラパミルやジルチアゼムは強力に房室結節を抑制してくれます。

β遮断薬もですが心収縮力低下には注意しましょう。

また、非ジヒドロピリジン系薬剤で注意しないといけないのはWPWを合併した心房細動です。

偽性心室頻拍を引き起こす可能性があるため禁忌です。

しっかり確認しましょう。

ジギタリスは高齢者や腎機能低下例では要注意です。

ジギタリス中毒は怖いですね。

心収縮力の低下した心房細動頻脈には使い道があるかもしれません。

アミオダロンはリズムコントロールも兼ねて使うことがあります。

リズムコントロール

直流除細動やカテーテルアブレーションを考慮

カテーテルアブレーションの適応でなかったり拒否、アブレーション失敗では抗不整脈薬を使用することもあります。

不整脈薬物療法ガイドラインより抜粋

器質的心疾患があればアミオダロンを選択。

あとは心房細動発症からの期間。

7日を過ぎるとNaチャネル遮断薬は効果が低くなるため選択しにくくなります。

では7日過ぎたらベプリジルかアミオダロンになるのですが

しかし、ベプリジルはQT延長作用も強く非専門医が使うにはリスクが高いです。

心外副作用をフォローしつつアミオダロンを用いることが多いと思います。

Naチャネル遮断薬特徴

シシリアンガンビット分類を活用しましょう。

下に特徴や注意点を私の見解でまとめてみました。

使用時は各種ガイドラインや添付文書を確認してください。

ジソピラミド

抗コリン作用が強い。迷走神経依存型(夜間好発)などで使う?

腎機能低下で蓄積、心機能低下症例注意。

膵臓β細胞のカリウムチャネルに働いて低血糖リスクあり。

シベンゾリン

抗コリン作用はジソピラミドより弱いがある。抗コリン作用による筋無力症の副作用報告もあり。

腎機能低下や高齢者、低体重では減量が必要。

透析で抜けない。中毒症例によく遭遇します。

ジソピラミドとともに低血糖リスクあり。

アプリンジン

腎機能悪くても使える。

催不整脈作用が少なく使いやすい。

Ⅰb群で主に不活性化チャネル遮断薬だが結合、解離が長いアプリンジンだけは心房の不整脈にも使える。

ピルシカイニド

純粋なNaチャネル遮断薬。

Ⅰc薬に共通することだがNaチャネルとの結合、解離が緩徐で効果も強い。

ほぼ腎排泄。

腎機能悪い場合は使わない方が無難。

どうしても使うときは減量してフォロー

フレカイニド

Ⅰ群薬の中で最も強力?

腎機能低下例では蓄積注意

簡単にこんな感じです。

あとはよく使う慣れた薬剤を選ぶことが多いかなと思います。

勝手知ったる薬剤の方がフォローしやすいので。

薬剤師としては

腎機能、心機能に問題はないか、投与量は適切か、(房室、脚)ブロックはないか、QT延長してないか、洞調律のときに徐脈でないか、電解質は問題ないかなんて確認します。

確認多いですね。

投与開始後もこれらを確認し、洞調律に戻っているか効果も確認しつつ他の副作用もないか確認します。

心電図モニターが付いていない、もしくは調剤薬局などでは脈を確認して整かチェックします。

特に腎機能は経過とともに変動しやすいですし利尿剤開始とかもあると一気に悪化することもあるため要注意です。

まとめ

心房細動は身近な不整脈でこれからも高齢化に伴いもっと増えていくことが想定されます。

抗凝固薬や抗不整脈薬が適正に使われているか、副作用はないかを薬剤師も確認できる必要があります。

各種バイタルや症状の訴えとともに採血結果や心電図も有用な評価ツールですので是非積極的に活用してみてください。

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