はじめに
高齢化が進むにつれ心不全患者は増加傾向にあり、心不全パンデミックへ突入しつつあります。
心不全とは何か、心不全患者への対応、薬剤師に何ができるのか、何をすべきかについて考えてみました。
心不全のステージ分類
心不全の状態がどの段階かを示すのが心不全ステージ分類、NYHA 分類です。
なるべく早期に介入して、進行を抑えます。
特に心不全増悪の度に階段をくだっていくため如何に再発を予防するかが大事になります。

初療でのクリニカルシナリオ(CS)
クリニカルシナリオの位置付けとしては初療での使用が有用かと思います。
特徴としては血圧で分類するところです。
血圧に応じて初療の対応が変わっているのは面白いところ。
なんで心筋梗塞でもないのにERでミオコールスプレーを使用しているかがわかると思います。

ベッドサイドでのNohria-steavenson
Forester分類のベッドサイド版といったところでしょうか。
強みは何といってもベッドサイドでできること!
Forester分類はスワンガンツカテーテルでの評価が必要となるため手軽に薬剤師が行えません。
その点、Nohria-steavensonの使いやすさはありがたい!
本当に毎日活用させていただいています!
クリニカルシナリオと違い初療だけでなく継続して活用しています。
浮腫や起座呼吸、冷感、傾眠などはわかりやすいですよね。
今どの場所にいるかでカテコラミンや利尿剤使用など推奨治療もありますし参考になります。
ベッドサイドで何を見たらいいかわからないっていうときは、とりあえずここに載っている症状を確認すると良いです。
これは調剤薬局や在宅医療でも使えますね。
今、患者がどのような状況か把握することは入院患者でも外来、在宅であっても必要性は同じです。
受診勧奨にも使えますし
是非活用してみてください。

HFrEFとHFpEF
この数年で言われだした概念ですね。
心不全患者とひとくくりにできない。
昔ながらのイメージでいう、ポンプ機能の低下がHFrEF
ポンプ機能は問題ないけど心室の拡張機能が低下しているのがHFpEF
実際はこの混合などもありますが、とりあえずこの二つの概念を覚えておきましょう。
HFrEF患者は昔からの概念ですしエビデンスも多いです。
治療薬もほとんどがHFrEF患者用。
HFpEF患者を対象としたスタディは今のところことごとく失敗しているようで、とりあえずHFrEFと同様の治療をしているのが現状です。

更なるエビデンスの構築が待ち遠しいです。
原因の分類
心不全だから利尿剤でしょ。
なんてなにも考えず心不全をひとくくりにしてはいけません。
何故、心不全になったのか。
その背景を知ることが治療計画にとても重要です。
心筋症か
弁膜症か
不整脈か
薬剤性か
なんかで治療方針は大きく変わっていきます。
心筋梗塞が原因であればそれを治療しないと根本的に解決しませんよね。
また、薬をきちんと飲んでいたか、水分や塩分の過剰接種はなかったか
これにより治療内容も指導も大きく変わります。
どんなに完璧な薬物療法でも飲めない状況であれば意味がありません。
その場合はお薬カレンダーの活用や薬の一包化、用法をまとめる、訪問看護師の介入など状況にあわせて対応します。
原因はどこであったかを病態、状況毎に分析が大切です。
病態把握
- バイタル
- フィジカルアセスメント
- 血液検査
- 胸部レントゲン写真
- 心エコー
- 心電図
- etc.
これらを活用して病態把握をおこないます。
バイタルは血圧、脈拍、酸素飽和度、呼吸回数、体温、尿量、体重、呼吸苦などをみます。
血圧はクリニカルシナリオにもあるように必須です。血圧が高いと心臓に負担がかかってしまう。苦しくて血圧が上がっているのかもしれません。
血圧が低いと低灌流だとわかります。
脈拍もとても重要。苦しいと交感神経が興奮して頻脈になるし、肺うっ血で酸素の受け渡しが上手くいかないとそれを頻脈や頻呼吸で補います。
酸素飽和度はきちんと呼吸ができているか体の中に酸素がどれだけあるか苦しさの指標ですね。
体温は感染が原因で心不全増悪を招いたのか、頻呼吸や頻脈は感染によるものもあるのかなんて考えます。
尿量や体重はイン・アウトのバランスを考えるために大切です。
フィジカルアセスメントは心不全に限らず薬剤師が身に付けると便利です。
心不全ではNohria-steavensonにある起座呼吸や浮腫、頸静脈怒張、四肢冷感、意識レベル。
それに浮腫は圧痕性か非圧痕性か
ツルゴール反応
なんてのをチェックしています。
血液検査では電解質や腎機能、BNPなど。
利尿剤では電解質異常が起きやすいですし腎機能も悪くなりやすい。
肝機能も悪くなっていれば腎機能低下はうっ血の影響で一時的かなんて考えます。
それに画像検査を織り込んで評価しています。
胸水や肺うっ血の評価
心エコーでの収縮力や拡張能、弁膜症、下大静脈の呼吸性変動などを見ていきます。
画像は自分で読めなくてもレポート結果がついてますしね。
これらを総合的に考えて今の状況と問題点、今後の薬物療法で関われるポイントなどを模索していきます。
心不全には薬剤師が活躍するポイントが一杯です。
心不全で入院してこなくても大抵の高齢者は心不全に注意が必要です。
高齢化とともに心不全パンデミックが予想されているなかで薬剤師がいかに職能を発揮するかが求められていると思います。
緩和ケアについてはまた別に取り扱います。
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