薬剤師に心電図は必要?
結論からいうと必要です。
確かになくてもなんとかなるかもしれない。
実際に多くの薬剤師は心電図を読めなくても仕事が出来ていますよね。
じゃあやっぱり要らないのかと思うかも知れませんが待ってください。
その薬剤師達はきちんと抗不整脈薬の評価ができていましたか?
おそらくほとんどの薬剤師は良くわかっていなかったと思います。
”添付文書通りに出せている” ”腎機能に合わせて減量している”
それだけでは足りません!
いやいや、血中濃度の提案したり調整してるよって言われるかもしれませんが
それだけでは十分とは言えないんです。
確かに腎機能に合わせて減量して血中濃度みて適切な量に調整することは
もちろんとても大切なことです。
しかし、血中濃度が即座に出る病院は限られています。
それに、抗不整脈薬の評価なのに不整脈自体は評価しなくていいのか。
降圧剤だったらもちろん血圧をみて評価しますよね。
抗不整脈薬も同じです。
心電図をみて抗不整脈薬がきちんと効いているか、副作用は出ていないかを評価します。
それに心電図に影響を及ぼす副作用は抗不整脈薬に限ったことではないですよね?
抗菌薬でQTが延長することもあるし
利尿薬による電解質異常で不整脈が出現することもあります。
そう!薬剤師にとって
心電図評価はフィジカルアセスメントと共に必須のスキルとなります。
それでも多くの薬剤師にとって心電図はとっつきにくいもの、良くわからないものだと思います。
ここでは心電図の基礎、勉強の仕方について説明をしていきます。
心電図でわかること、限界
まず心電図で、
何がわかって何がわからないのかを知ることが大切です。
心電図でわかること
- 不整脈
- QT延長
- 心筋梗塞
- 心筋炎
- 心肥大
- 肺塞栓
- etc.
やはり不整脈の検出がメイン
刺激伝導系の異常に欠かすことができません。
他は補助的な役割にとどまります。
ST上昇と鏡像変化があれば心筋梗塞を疑いますがやはり採血や心臓カテーテル検査は必要となります。
心電図の限界
心筋細胞は一つ一つの細胞が興奮して電気を流しています。
心電図ではその電気のベクトルの総和を示しているため一つ一つの心筋の状態を表すことには限界があります。
そして心電図は先に述べたように不整脈、刺激伝導系以外は補助的な役割にとどまるのですが、不整脈であっても完璧ではありません。
臨床の現場でも心電図だけでは不整脈の種類を絞ることはできても確定することは困難なケースもしばしば遭遇します。
不整脈専門医でも一般的な心電図では確定困難なケースがあるほど不整脈は奥が深いです。
そして
不整脈はそのタイミングを測定しないといけません。
日頃の動悸の訴えで心電図を撮影してもその時に不整脈が出ていないと何も分からないんです。(その場合はホルター心電図で24時間ずっと記録も検討)
心電図の基本
心電図とは

心筋細胞が発する電気興奮を波形にして表したものです。
手首、足首と胸に電極を装着して12の方向(誘導)から電気の大きさ、向きを読み取ります。
テレビでよく見る1つだけの波形が映っているのはモニター心電図といって1つの誘導しか見ていないため厳密には心電図とは言わないこともあります。

電極から離れていく電気を下向き、近づく電気を上向きとして表現しています。
電極に👁️があると考えて電気のベクトルが遠ざかるのか向かってきているのかを考えます。
心電図を学ぶときはただ波形を覚えるのではなく、何故その波形になっているかをイメージできるようにしないと応用がききません。
まず正常波形が何故その形になるのかをイメージすることから始めます。
刺激伝導系
心筋の電気活動は
洞結節から始まり
心房筋を興奮させながら
房室結節に伝わります。
房室結節を通過した電気は
His、脚、プルキンエを流れて
心室筋を興奮させます。

P波
心房の電気活動を表しています。
ちなみに
右房波と左房派の重なりがP波として表されます。
洞結節から出た興奮は房室結節のある左下に向かうため
P波は第2誘導で一番大きく見えます。
心房細動のように心房の規則正しい興奮が失われた場合は
基線の動揺がf波として記録されます。
f波は右心房が近いV1で見やすいです。
そのためP波を見るときは第2誘導かV1をチェックします。
P波チェック時は
- P波があるか、同じ形か
- 規則正しいか
- 逆行性でないか(上向きのはずが下向きでないか)
- P波の高さと幅は正常か(高さ2.5㎜、幅3㎜未満)
- QRSと連動しているか
などを確認します。
PQ時間
正常は0.12~0.2秒。
短すぎたり長すぎないか確認。
短いとWPW症候群を疑う。
長いと房室ブロックなど刺激伝導系の異常を疑う。
QRS
心室筋の興奮の始まり。
第1、2誘導にて電気軸を確認。(上向きか)
異常Q波がないか。→心筋梗塞、心筋症など
QRS時間の延長はないか。→脚ブロック、心筋の伝導障害
P波と連動しているか。→房室ブロック
RR間隔は一定か。→心房細動など
R波の高さ→心肥大や心筋壊死
などを確認します。
ST、T
T波は心室筋の再分極を表している。
STは基線から見て考える。
STの上昇や下降がないか。→心筋虚血、心筋症、左室肥大、チャネルの異常(ブルガダ)など
T波の向き。→心筋虚血、心筋症、左室肥大など
T波の高さ。→電解質異常など
QT時間
心筋の興奮時間。
QT延長は致死的不整脈を引き起こしうる。
QT延長は見逃されやすい⁉️薬剤師こそ副作用モニタリングに活用しよう!
まとめ
心電図は薬剤師に有用。
形を丸暗記せずに成り立ちを考える。
本当はもっともっと掘り下げたいし広げたいのでまたの機会に。
心電図を学ぶ上でオススメの本も紹介しています。
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