病院から薬局への転職を考えている薬剤師は少なからず不安を感じていると思います。
私自身、急性期病院で約10年薬剤師として勤務しましたが家庭の事情や年収がネックとなり調剤薬局へ転職しました。しかし転職を決意するまでには多くの悩みや葛藤がありました。
そこでこの記事では病院薬剤師が調剤薬局への転職で不安に感じていることや実際のところどうなのかについて解説します。
この記事を読めば病院薬剤師から調剤薬局への転職に抱いている不安を少し解消して新たな一歩を踏み出す勇気が出ると思います。
転職理由5つ
- 年収が低い
- 夜間当直
- 結婚妊娠などライフスタイルの変化
- 人間関係
- 昇進、評価されない
年収が低い
こんなデータがあります。
- 全体 543万円
- 病院薬剤師 400~500万円
- 調剤薬局 450~550万円
- ドラスト 500~600万円
一般的に薬剤師の年収はドラッグストア>調剤薬局>病院となっています。
病院だけ低すぎだね
そう、病院薬剤師は他と比べて年収が低い傾向にあります。
公立病院では順調に年収は上がっていきますが民間病院では部長クラスにならないと年収が低いままのことが多いです。
元・係長
子供の学費とか考えると正直厳しいから転職活動しました。良い話をもらったから調剤薬局で決めました。
独身ならまだやりがいだけで生きていけますが家族を養う立場になると悲しいですがお金の事情は避けては通れません。
独身でも人生100年時代。老後の蓄えを貯めたり好きなことをするためにはお金は必要です。
そもそもこんな悩みで病院への就職を諦めた薬剤師もいます。
奨学金フルで借りてて1000万円くらい…とても病院では返せないから薬局に就職です。
病院に興味あっても経済的に就職できない現状まであります。

夜間当直
夜間も薬剤師が宿直している病院は多く、24時間体制で仕事をします。
夜中でも構わず調剤や電話対応、薬剤発注やときにはERに呼ばれることも。
また新人薬剤師でも当番に入るため日中は先輩に相談していることも全て自分の責任で対応しなくてはいけません。
当直業務は精神的にも体力的にもきついです。
1週間に1回は当直があるからきつくて…転職活動中です。友達の話聞くと薬局がいいな。
当直で体調を崩す薬剤師は多いです。
人数が少ないほど当直が回ってくる頻度も高くなりきつくて人が辞めて更にきつくなり…こんな負のループに陥る状況は少なくありません。
結婚妊娠などライフスタイルの変化
結婚、妊娠、介護などライフスタイルの変化も病院を退職する定番の理由です。
結婚が決まって実は子供もできました。病院は楽しいけど家族養えないし当直とか難しい。
親が病気になって。自分の結婚も決まって病院じゃ時間の融通がきかないから薬局へ。
人生の大きなターニングポイントに立ったときに病院での働き方は限界があるのが現状のようです。
人間関係
薬局でもどこでも一緒に働くスタッフと相性が悪い場合はストレスです。
また、病院では薬剤師だけでなく医師や看護師、その他スタッフと連携を取る必要があります。
看護師に話しかけられるのが怖いから辞めます。
コミュニケーションが苦手な薬剤師にはチーム医療の推進による大人数とのやりとりはきついときもあります。
コミュ障に病院薬剤師はつらい⁉️退職理由【看護師と話すのが苦手】体験談
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昇進できない、評価されない
病院では部長(薬局長)をトップとして次長、課長など役職を設定していますが、そもそも薬剤師の人数に比べて相対的に役職付きが少ないです。
昇進できないと給料も上がらない。
また、昇進できなかった場合は周りの視線が気になったり、自分をきちんと評価してくれる職場に転職を考えることがあります。
転職の心配事と転職してみて気付いたこと
病院を辞めて転職したいと考えても気がかりもあって踏み出せない薬剤師は多いです。
やっぱり病院と違うから不安
- カルテが見れない
- 今までの経験を活かせるか
- 単調な作業
- 勉強できるか
- 閉鎖的なコミュニティ
- 調剤薬局は淘汰される?
カルテが見れない
病院ではカルテを見ることでバイタルや検査値、処方意図や経緯までわかります。
しかし薬局では患者の協力のもと話を聞いて採血結果を見せてもらって処方意図を読み取るしかありません。
ここが病院から薬局へ転職する際に一番ネックという薬剤師もいます。
カルテ見れないと何もわからないよ!どうやって服薬指導したらいいんだ…
薬が変更になった理由も患者が非協力的であったり理解していないとわからず医師に問い合わせをしなくてはいけないこともあります。
だからこそなるべく多くの情報を引き出せるようにコミュニケーション力や試行錯誤して情報を引き出す努力が必要となります。
今までの経験を活かせるか
後述しますがおおいに活かせます。
単調な作業
主に調剤、監査、服薬指導だけでありチーム医療や医師とのディスカッション、処方提案などの業務がほとんどなくなることが多いです。
このことを危惧している薬剤師には在宅医療を専門に行う薬局が向いているかもしれません。
勉強できるか
eラーニングや学会参加へのサポートをしている薬局は多いです。
不足分は本を買ったりガイドラインや論文検索、Web講演会でフォローすることで賄うことができます。
閉鎖的なコミュニティ
病院と異なり普段接するスタッフが少なく病棟などへの逃げ場もないため誰か一人でも気が合わない人がいるとストレスがたまります。
転職前にしっかり見学を行い雰囲気をつかみます。
もし就職してから合わないようであれば他の店舗への移動も検討してもらうことが可能な場合が多いです。
調剤薬局は淘汰される?
2015年に厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を示しました。
その中で現在の門前薬局のスタイルにメスを入れ、2025年、2035年と段階的にかかりつけや地域に根付いた薬局への変化を目的としています。
しかしこの変化に付いていけない薬局も多くでることが予想されます。
薬局サバイバル時代に突入のため転職の際は将来のビジョンがしっかりしている&時代の変化に敏感な調剤薬局を探すことをオススメします。
実際に調剤薬局で困ったことと対策
・調剤報酬の細かさ
・処方意図や医師との意思疎通が困難
・適切な薬物療法やチーム医療への関与が困難
調剤報酬
調剤薬局では調剤報酬算定における細かな設定が非常にややこしく病院からの転職では慣れないことが多いです。
全くわからん
同僚の薬剤師や調剤事務さんに聞いたり、定期的に開かれる薬局での説明会などで知識をつけていくしかありません。
それでも最低限は1ヶ月もあれば慣れるのでその事を理由に転職を諦める必要はないと思います。
処方意図や医師との意思疎通が困難
カルテが見れないことも大きいですが、病院と違い医師と同じ施設内にいないので頻繁に処方意図や治療方針について確認や議論ができないです。
メインの病院、クリックの医師と関係を構築することで情報を入手することは可能ですが病院のように頻回にディスカッションしたり医師の思考に触れることは難しくなります。
疑義照会の必要までないけど疑問に思ったことや知りたいことはメモにまとめておき機会があったときに確認することをオススメします。
また、MRが担当する薬の処方意図を各医療機関から入手していることが多いためメモの内容をMRに聞くのも有効な手段となります。
適切な薬物療法やチーム医療への関与が困難
患者の病態を把握して医師に処方提案や薬剤変更の提案を行う
病院ではよくある日常で厚生労働省が本来薬局の薬剤師に求めている姿だとは思います。
しかし現時点では一部の薬局を除いて医師との連携が充分でなく
そもそも患者の病態を正しく把握することも困難なケースが多く患者やその家族、ケアマネとの連携が不足しています。
しかし、これからの薬局には地域に根付いた働きや連携が求められてきます。
経験の活かしかた
病院で働いていた経験って役にたつの?
病院での経験は必ず力となります。
- 処方意図
- DI
- チーム医療
- 検査結果やバイタル
- 勉強の仕方
処方意図
病院ほどすべての処方意図を確認することは困難ですが、それでも多くの処方意図をみてきた経験からある程度は処方箋だけで意図を把握できます。
病院薬剤師を経験すればその背景まで広く深く読み取ることができます。
DI
病院にいると医師や看護師などスタッフ、それに患者から多くの質問をされます。
時には患者の治療方針や命に直結する質問を短時間で求められることもあります。
そのような経験から調べたことで多くの知識を手に入れて
自分で調べる力や調べ方も身に付けています。
チーム医療
病院には多くの医療スタッフが働いておりチーム医療が進められる現在では患者を中心に共に専門性を活かして情報共有やアドバイスを行います。
時には入院前や退院後のケアにも関わります。
これからの薬局は地域で患者を見守る大きなチーム連携の輪の1つとなります。
チーム医療の経験は必ず活きてきます。
検査結果やバイタル
病院、特に病棟担当では受け持つ患者の薬物治療に責任をもっています。
薬の効果や副作用を検査結果やバイタル、フィジカルアセスメントを通してモニタリングするため薬についての理解が深くなります。
来局や在宅医療ともに患者の薬物療法に大いに役だてることができます。
勉強の仕方
病院では多くの質問にすぐに答えられるように、患者の薬物治療に責任を持つため、さまざまな理由で勉強が必須となります。
薬局にいる薬剤師でも勉強熱心な薬剤師はいますが病院と比べて少なく、勉強法の情報交換も少なくなります。
薬剤師は生涯勉強が求められます。
病院での勉強癖や勉強法は大きな強みです。
調剤薬局に転職するメリット
病院からの転職理由と被るのですが、主にこの3つがあげられます。
- 年収アップ
- プライベートの確保
- 多様な働き方
年収アップ
病院から転職した場合少なくとも50-100万円くらいは年収がアップすることが多いです。
条件により更なるアップも望めます。
プライベートの確保
夜間当直がある薬局はほとんどなく日曜、祝日も休みなので仕事とプライベートをはっきり分けやすいです。
多様な働き方
調剤薬局の数は6万軒を超えており、それだけ多様な求人、働き方のチャンスがあります。
ライフスタイルに合わせた求人
休みを重視した求人
自分にあった働き方の選択が可能となります。
有利な資格
外来がん治療専門薬剤師★★★★★
日本臨床腫瘍学会が創設した認定制度。
外来がん治療を安全に施行するための知識、技能を習得して地域がん医療において患者とその家族をサポートします。
専門医療機関連携薬局の要件
地域ケア専門薬剤師(がん)とともに現時点で算定に大きく関わり各調剤薬局が喉から手が欲しい薬剤師資格です。
地域薬学ケア専門薬剤師(がん)★★★★★
日本医療薬学会が創設。
地域医療と介護ケアに関する薬学のスペシャリストのがん領域。
専門医療機関連携薬局の要件
その他
認定、専門薬剤師資格を取ると勉強する意欲があると認められるため転職でアピールになります。
小児科の門前であれば小児薬物療法認定薬剤師などもオススメです。
ちなみに日本調剤薬局では下記資格取得で資格手当50,000円/月を支給するそうです。
- 外来がん治療認定薬剤師
- 腎臓病薬物療法専門(認定)薬剤師
- 栄養サポートチーム専門薬剤師
- 糖尿病薬物療法認定薬剤師
- 緩和薬物療法認定薬剤師
- がん専門薬剤師
- HIV感染症薬物療法認定薬剤師
転職の注意点
病院から調剤薬局に転職する際に注意したいことは市場の相場です。
薬剤師を取り巻く環境は5年前と現在では変わっており転職環境も変わってきます。
しっかりと自分の市場価値を把握しておくことが大切となります。

転職サイトに登録
転職サイトに登録することで薬剤師を取り巻く環境、市場価値の把握や転職ノウハウ、時短になります。
実際に私も利用しました。
転職サイトとか電話しつこそう
大丈夫。登録確認のため一番最初に電話してくるけど、一度電話に出て対応すれば必要以上にかけてこないよ。
「今忙しいから仕事終わりに」とか「今後はメールで」とか伝えれば◎
適当な求人紹介するんじゃないの?
紹介してもすぐに辞められたら紹介する側も信用を失うし、多くのエージェントは本当に親身になって探してくれるよ。
どこの転職サイトがいいかわからない。
実際に僕も使ってオススメな転職サイトの比較表を作ってみたよ。
求人数 | オススメ度 | 特徴 | |
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ファルマスタッフ ![]() | ◎(4万件越) | ★★★★★ | 面接同行 派遣も強い |
マイナビ薬剤師 ![]() | ◎(5万件超) | ★★★★★ | コンサルの質 迅速◎ |
薬キャリ ![]() | ◎(4万件超) | ★★★★★ | 薬剤師転職王道M3キャリア 徹底的なサポート 満足度高い |
【薬剤師の派遣・転職 お仕事ラボ】 ![]() | ○ | ★★★☆☆ | 転職後の定着率◎ |
まとめ
病院を辞めて調剤薬局に転職する薬剤師は病院を辞める段階、転職中の段階、転職後の段階と何度も不安や葛藤の中にいます。
まずはどんな求人があるのか、自分が転職する場合はどのような条件になるのかそれを知ることが大切です。知らないから不安になります。
多くの心配事は杞憂に終わることが多いです。小さな一歩を踏み出してみましょう。
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