「今目の前で人が倒れたとき、適切な対応がとれますか?」
薬剤師は普段患者と触れあう機会が少なく急変の場に立ち会う機会も少ないです。
それでも目の前で倒れた人を見て何もできずにうろたえて他の人が来るのをただ待つだけの自分でもいいですか?
今回は薬剤師にオススメな救急の講習コースをご紹介します。
BLS/ACLSとICLS、FCCS
ともに急変時の対応を学ぶコースですがそれぞれ違いがあります。
BLS
AHA(アメリカ心臓協会)のガイドラインに基づき行われます。
Basic Life Supportの略で
心肺停止や呼吸停止を対象とした一次救命処置を行います。
ここでは病院外を想定し、救急隊へ引き継ぐまでの
- CPR(気道確保、人工呼吸、胸骨圧迫)
- AEDの使い方
- 気道異物の窒息解除法
を学びます。
AEDは使いますが、他は病院のように専門的な器具や薬剤を使いません。
車の免許取得時にした方もいるかもしれませんね。
しかし、5年毎にガイドラインが変更されており最新の情報を知る必要があります。
病院勤務でなく調剤薬局勤務でも薬剤師として最低限身に付けておきたい技術です。
患者さんが待ち合い室で倒れたときに何もできないのは悔しいですよね。
使う機会はひょっとしたらないかもしれません。
でも、もしものときに身につけているかどうかで一つの命の大きな分かれ道になります。
BLSの知識は医療従事者(そうでなくても)に必須と考えます。
BLSコースは5時間程度で終了するため、是非、受講をご検討ください。
一般市民用もあるためご家族での参加もオススメします。

ACLS
AHA(アメリカ心臓協会)のガイドラインに基づき行われます。
ACLSとは、Advanced Cardiovascular Life Supportの略で二次心肺蘇生法のことです。
病院等医療施設において医師を含む医療従事者のチームによって行われる心肺蘇生法であり、BLSで学んだ基本のCPRと共に、気管挿管などの確実な気道確保と高濃度酸素投与、電気的除細動、静脈路確保と薬物投与を主体とした手技によりなされる高度な処置を学びます。
チーム全体で救命率をあげるために取り組みます。
BLS(有効期限内)かACLS(期限不問)の取得者のみ受講可能です。
コースは丸2日にかけて行われます。
事前に確認問題が配られるためそれを解いてコースに挑みます。
救急初心者には簡単ではない問題がまあまあな量あります。
そのためある程度の予習が必須となります。
コース内容は座学と実技。
緊急を要する心電図波形の把握も必須です。
実技ではチームリーダー、胸骨圧迫、AED、記録係に役割分担して蘇生に挑みます。
コロコロ変わる病態、心電図
BLSと比べて一気に難易度が上がります。
試験は実技、筆記試験。
受講料は高く、テキスト代とあわせて46,000円程度かかるため家計への負担は大きいですが病院勤務であれば一度検討してもよいと思います。
ICLS
Immediate Cardiac Life Supportの略で
日本救急医学会が主催する医療従事者のための蘇生トレーニングコースです。
ACLSは座学にも力を入れていますが、ICLSでは座学は最小限で実際に即したシミュレーション実習を繰り返して行います。
実際のシミュレーションを想定しているため現場ですぐに役立ち、1日のみ、費用も13,000円とACLSに比べてお手頃です。
試験はないですが、実践的なシミュレーションがいきなり始まるため最低限テキストを読んでいないとついていけなくなるかもしれません。
ちなみに救急認定薬剤師の受験にはICLS受講か院内でのBLS/AEDコース指導の証明書が必要となります。
FCCS
Fundamental Critical Care Supportの略で、米国集中治療医学会(SCCM)が主催する研修プログラムです。
重症集中治療患者の初期評価、管理、安定化、転送などの基本的なアプローチを学ぶことができます。
また、気道、呼吸、循環、神経学的状態、腎臓機能など、多くの重要な治療領域について詳しく取り扱います。
薬剤師の受講者は多くありませんが、集中治療を網羅的に学ぶことができます。
個人的には一番楽しかった…
結局どれがいいの?
病院勤務→
ICLSがオススメ。
座学まで学ぶ意欲とお金があればBLS/ACLSも検討してよいと思います。
ACLSの場では経験豊富なインストラクター達が座学やその他ワンポイントアドバイスをくれてとても勉強になります。
調剤薬局やドラッグストア→
BLS一択。でも必須。
体験談
ちなみに私は、
BLS→ACLS→FCCS
その後、救急認定薬剤師の資格のためにICLSを受講しました。
薬剤師1年目の時に、先輩から
「病棟に行くならBLS受けといた方がいいよ。ACLSも勉強になるからオススメ」
との言葉でBLS受講。
しっかり心肺蘇生法の基礎を学べたし他職種の人達との講習が楽しかったです。
続けてACLSも受講しました。
心電図の基礎もわからず、他の救急基礎もBLS以外何もわからない状態。
念のため事前学習に1ヶ月程費やしました。
事前問題が初心者の私には難しく、ACLS受講早まったかな?とちょっと弱気になってしまいました。
それでも問題を解きつつテキストを読んでBLSの復習もしていざ受講。
ACLSは座学にも力を入れており、何故そうなるのかも簡単にですが説明してくれたりして本当に勉強になりました。(ACLSより突っ込んだことを学べます)
実技はBLSとは違い心電図モニターも確認しながら最適な処置を施していきます。
コロコロ変わる病態と心電図にてんやわんやですが本当に楽しかったです。
救急は医師1人の力ではなくチームで行うことだと実感しました。
ACLSを受講すると実際の救急の場で医師の思考がわかるから次に何をするべきかも読み取れるようになることがメリットです。
テキストの後ろにケースが載っているため予め目を通しておくとACLS受講の際に役立ちます。
救急もある程度慣れたところでICLSを受講することに。
テキストは小さく、実践に役立つことが最小限載っているなという印象。
実際に始まると、ほとんどずっとシミュレーションをして、合間に補足といった感じでした。
それでも内容的にはACLSまで受講し、実際の現場でも度々急変時対応していた私でも復習だけでなく新たな発見や講師の考え方に触れることができたため有意義に過ごすことができました。
難易度でいうとFCCS>ACLS>ICLS>BLSといった感じです。
まとめ
薬剤師も急変時の対応を学ぶ必要があります。
病院勤務とそれ以外では必要とされるものも変わってきます。
それぞれにあったオススメのコースを受講してみましょう。
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